曠野の雪 濱野成秋

濱野成秋    室生の春はまだあさい。狭霧が谿たに沿いにたゆたい、垂れ籠こめるとみせかけながら、ゆっくり塔堂のほうに這い昇ってゆく。流れは鳴りを潜め、霧が徐々に川面をたち去ってくれるのをじっと待っていた。 寺に向かう太鼓 […]